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第3話 見覚えのない男の靴

ผู้เขียน: さぶれ-SABURE-
last update วันที่เผยแพร่: 2026-08-30 11:56:53

「彼は私の会社の社長です。今日は体調を崩してしまって、送っていただいただけで……」

「でも、お似合いよ」

「本当に違いますから!」

 慌てて否定すると、隣から小さな笑い声がした。瓢社長だ。

「社長……申しわけありません」

「なぜ謝るんです?」

「だって、変な誤解をされてしまって……」

「僕は別に困りませんよ」

「え?」

「行きましょう」

 さらりと言って、瓢社長は駐車場へ歩き出した。

「自宅まで送ります」

「でも、ここから近いので……」

「病院帰りの女性と四歳の子供を途中で降ろしたら、何のためにここまで来たのか分からないでしょう」

 反論できなかった。

「……では、お言葉に甘えます」

「そうしてください」

 陽奈を後部座席のチャイルドシートに乗せ、私もその隣に座った。社長の車にチャイルドシートがあるなんて。

 車が走り出すと、陽奈は上機嫌で今日の出来事を話し始めた。

「しゃちょうさん、きょうね、ひな、おかたづけしたの」

「へえ。偉いね」

「せんせいにもほめられた!」

「それはすごい」

「あとね、おえかきもした!」

 陽奈の話を、瓢社長は面倒がることなく聞いてくれる。

 私はその横顔を不思議な気持ちで見つめていた。

 前の夫は違った。

 陽奈が話しかけても、

『疲れてるから後にして』

 スマホを見ながらそう言うことが多かった。

 私も同じだった。

 仕事に追われて、娘の話をちゃんと聞いていなかった。

「ママ」

「なあに?」

「きょう、ママといっぱいおはなしできる?」

 胸を突かれた。

「うん」

「ほんと?」

「今日はいっぱいお話ししよう」

「やったあ!」

 今度こそ絶対に間違えない。

 仕事よりも、お金よりも。

 この子と過ごせる時間を大切にする。

 そして私を襲ったストーカーを突き止める!

 やがて車は、私たちが暮らす社宅へ到着した。

「ありがとうございました」

「部屋まで送ります」

「えっ? そこまでしていただかなくても……」

「荷物を持ちますよ」

「でも……」

「相沢さん」瓢社長が私を見る。

「今日くらい、人に頼ってください」

「…………」

 その言葉に何も言えなくなった。

「帰る途中で倒れたら、陽奈ちゃんが困ってしまいますよ」

 そう言われては返す言葉もない。

「……ありがとうございます」

 三人で階段を上がった。

 二階の廊下、いつもの景色。いつもの自宅。

「陽奈、ちょっと待ってね」

「うん!」

 鞄からキーケースを取り出す。

 鍵を開錠ようと回し――

「……あれ?」

 違和感。

「どうしました?」

「……おかしいんです」

 背中に冷たい汗が滲んだ。「鍵が……開いています」

 どうして?

 なぜ?

 今まで戸締りを怠ったことはない。

  鍵をかけ忘れたかも、と思って確認するくらいなのに、ぜったい、おかしい。

「今朝、確かに鍵をかけました」

 瓢社長の表情が変わった。

「触らないでください」

「え?」

 私より先に前へ出る。

 さっきまで陽奈に向けていた優しい表情が消えていた。

「陽奈ちゃんと、後ろに下がって」

 低い声。

 私は反射的に陽奈を抱き寄せた。

 もしかして、私を殺そうとして追いかけて来た――?

 瓢社長がゆっくりと扉に手を掛ける。

「社長……」

「ここにいてください」

 扉を押す。

 ギィ……

 暗い玄関が、ゆっくりと姿を現した。

 そして。

「…………!」

 私は息を呑んだ。

 玄関に、見覚えのない男物の靴が、一足置かれていた。

 全身から血の気が引く。

 そんな。

 まだ早い。

 それにまだ、彼の正体はわかっていない。

 私が殺されるのは、半年後だったはず。

 なのに。

 死ぬ直前に聞いた声が、鮮明に蘇る。

『これで、ようやく家族になれるね』

 私は震える手で、陽奈を強く抱きしめた。

――どういうことなの!?

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